和歌山県 > 御坊・日高 > なかがわ(旧中川家住宅)

なかがわ(旧中川家住宅)

(きゅう なかがわけ じゅうたく)

昭和初期の豪華な邸宅

なかがわ(旧中川家住宅)は、和歌山県御坊市の寺内町に残る昭和初期の近代和風住宅で、かつて材木商として繁栄した中川家の邸宅です。御坊市中心部、本願寺日高別院の北およそ100メートルという歴史情緒あふれる場所に位置し、現在では無料で見学できる観光スポットとして人気を集めています。

昭和13年(1938年)に完成したこの邸宅は、その豪壮な姿から「日高御殿」とも呼ばれていました。和風建築を基調としながらも洋風の応接室やモダンな意匠が取り入れられており、当時の豊かな暮らしや高い美意識を感じることができます。

また、元内閣総理大臣の東久邇宮稔彦王や、世界的な博物学者として知られる南方熊楠も滞在したと伝えられており、御坊市の歴史を語るうえでも大変貴重な建築物です。

材木商・中川家が築いた格式高い邸宅

中川家は、江戸時代初期の寛文年間から続く由緒ある家柄で、代々山林業や材木商を営んできました。特に中川計三郎氏の時代には事業が大きく発展し、現在の中川木材産業株式会社の礎が築かれました。

旧中川邸の建設には、当時としては破格ともいえる10万円もの巨費と、約5年の歳月が費やされたといわれています。当時は1000円程度で家が建てられた時代であり、その規模の大きさからも、中川家の繁栄ぶりをうかがうことができます。

昭和12年(1937年)に上棟され、翌年に完成した邸宅は、御坊の町並みの中でもひときわ存在感を放っていました。現在でもその重厚な外観は訪れる人々を魅了しています。

和と洋が美しく調和した建築美

旧中川家住宅の最大の魅力は、和風建築と洋風建築が見事に融合している点です。外観には入母屋屋根が重層的に組み合わされ、さらに庇(ひさし)が巡らされており、非常に重厚感のある造りとなっています。

建物は石垣の上に建てられており、寺内町の通り沿いに堂々とした姿を見せています。町家とは異なり、中央部分に玄関を配置し、その左右にさまざまな部屋を配置するなど、機能性も考えられた造りになっています。

玄関を入ると、まず美しい中庭が目に飛び込みます。この中庭を中心として北側と南側に部屋が分かれており、邸宅全体に開放感を与えています。

洋風応接室に見る昭和モダン

邸内でも特に印象的なのが、洋風の応接室です。昭和初期のモダン文化を色濃く感じさせる空間で、暖炉や輸入クロス、洋風の梁型などが設けられています。

当時としては非常に先進的なデザインであり、和風住宅の中に洋館の雰囲気が自然に溶け込んでいます。応接室の窓には横長の建具が使われており、洗練されたデザインセンスを感じることができます。

また、玄関脇の座敷には繊細な格子細工が施されており、単なる縦格子ではなく、曲線を取り入れた優雅な意匠が見られます。細部に至るまで職人の技術と美意識が息づいており、昭和初期の贅沢な建築文化を今に伝えています。

良質な木材をふんだんに使用

材木商の邸宅らしく、建物には良質なヒノキ材が数多く使われています。柱や梁、建具に至るまで上質な木材が使用されており、木の温もりと重厚感が館内全体に漂っています。

木造平屋建てを基本としながら一部は2階建てとなっており、建築面積は約308平方メートルにも及びます。現在でも建築当初の姿を良好に残しており、昭和前期を代表する近代和風住宅として高く評価されています。

東蔵・西蔵が彩る歴史的景観

敷地内には主屋だけでなく、「東蔵」と「西蔵」と呼ばれる土蔵も残されています。白漆喰の壁と瓦葺き屋根を持つ美しい蔵で、窓周辺の漆喰仕上げも非常に丁寧です。

これらの蔵は単なる収納施設ではなく、邸宅全体の景観を構成する重要な要素となっています。主屋と蔵が並ぶ風景は、まさに昭和初期の豪商の屋敷そのものです。

保存と再生によって蘇った文化財

旧中川邸は昭和40年代まで実際に住居として使用されていました。しかし、その後は老朽化が進み、一時は取り壊しや売却の話も持ち上がりました。

そこで、御坊の歴史的景観を守ろうとする地域の人々や「御坊まちづくり委員会」が保存活動を開始し、建物は修復されることとなりました。

平成26年(2014年)には大規模な修理が行われ、「なかがわ」という名称で新たに活用されるようになります。現在は地域文化の発信拠点として、ギャラリー展示やイベントなども開催されています。

風情ある「そば&Cafe なかがわ」

敷地内の蔵を改装して誕生した「そば&Cafe なかがわ」も人気スポットのひとつです。落ち着いた和の空間で、手打ち蕎麦や天丼、親子丼などを楽しむことができます。

特に、1日限定10個の「そばプリン」は人気メニューとして知られており、そば粉の香ばしさを生かした優しい味わいが好評です。

店内ではゆったりとした昭和レトロな雰囲気を楽しむことができ、観光の合間の休憩にもぴったりです。

寺内町散策とあわせて楽しみたいスポット

旧中川家住宅の周辺には、本願寺日高別院を中心とした寺内町の町並みが広がっています。古い商家や町家、紀州鉄道など、歴史情緒あふれるスポットが点在しており、ゆっくり散策するのに最適です。

寺内町を歩きながら旧中川邸を訪れることで、御坊市の歴史や文化、そして昭和初期の豊かな暮らしをより深く感じることができるでしょう。

アクセス情報

所在地:和歌山県御坊市御坊105
アクセス:湯浅御坊道路「御坊IC」から車で約10分

歴史と美意識が息づく「なかがわ(旧中川家住宅)」は、御坊市を代表する近代建築の名所です。和と洋が調和した美しい空間の中で、昭和初期の贅沢な時間をぜひ体感してみてください。

Information

名称
なかがわ(旧中川家住宅)
(きゅう なかがわけ じゅうたく)

御坊・日高

和歌山県