柿の葉の殺菌作用を利用した保存食として、昔から作られてきた“柿の葉寿司”。現在でも紀北地方では、祭りや祝い事の際に欠かせない料理として親しまれている。じんわり熟成されたネタの味わい深さ、甘めのシャリ、柿の葉のほのかな香りが楽しめる逸品。ひと口サイズで食べやすく、箱の中に柿の葉に包まれた寿司がきれいに並んだ見た目がかわいらしいと、おみやげとしても人気が高い。サバやアユなどネタはお店により異なるので、お気に入りを見つけるのも楽しい。
柿の葉寿司は、和歌山県の伊都地方で愛される伝統料理です。この地域は柿の名産地で、富有柿やたねなし柿が育ちます。江戸時代に生まれた柿の葉寿司は、寿司飯に具材を載せ、紅葉した柿の葉で包んでいます。昔は秋祭りのごちそうとして親しまれ、柿の葉に含まれるタンニンの抗菌・抗酸化作用が保存に一役買ったと考えられています。
具材には熊野灘から運ばれたサバやカチエビの甘辛煮、しいたけ、かまぼこ、油揚げ、卵などが使われ、身近な食材を工夫して組み合わせています。柿の葉は、きれいに紅葉した渋柿の葉が選ばれ、その状態で使われます。この特有の香りが、寿司に深い味わいをもたらします。
柿の葉寿司は昔は秋祭りの特別なごちそうでしたが、今では季節や祭りに拘らず、一年中様々な具材を使って楽しまれています。保存のために柿の葉を塩漬けにし、来客時に手軽に柿の葉寿司を作ることもあります。
作り方は、すしを柿の葉でくるんで重石をして一晩押すことで、酢と白米と具材が馴染み、より美味しくなります。柿の葉で包まれているため、お皿の代わりになり、手軽に楽しむことができます。
和歌山の伝統料理として、柿の葉寿司は現在も広く親しまれ、専門店や百貨店で和歌山の特産品として販売されています。地域の伝統を守り、新しいアプローチで楽しむ姿勢が、柿の葉寿司をますます多様化させています。
主な伝承地域:かつらぎ町、九度山町
主な使用食材:柿の葉、米、サバ、しいたけ、エビ