和歌山県 > 串本・古座川 > 紀伊大島

紀伊大島

(きいおおしま)

本州最南端の海に浮かぶ歴史と自然の島

黒潮が育む自然、そしてトルコとの友情が息づく島

和歌山県東牟婁郡串本町の沖合に浮かぶ紀伊大島は、豊かな自然と深い歴史、そして日本とトルコの友好の原点ともいえる物語を持つ魅力あふれる島です。

本州最南端・潮岬からおよそ1.8kmの海上に位置し、和歌山県内では最大の島として知られています。面積は約9.68平方キロメートル、周囲は約28kmにも及び、黒潮の恵みを受けた温暖な気候と雄大な海景色が広がっています。

かつては船やフェリーでしか渡ることのできない離島でしたが、1999年にくしもと大橋が完成したことで、本州と陸続きとなりました。現在では車で気軽にアクセスできるようになり、串本観光を代表する人気スポットとして多くの人が訪れています。

自然豊かな「森の島」

紀伊大島は「森の島」とも呼ばれ、島全体が照葉樹林に覆われています。ウバメガシやシイ、ツバキなど暖地性植物が生い茂り、本州とは少し異なる独特の自然環境を形成しています。

春になると、島ではオオシマザクラが美しく咲き誇ります。白っぽい花と青々とした葉が特徴で、鮮やかなツバキの赤い花とのコントラストが非常に美しく、紀伊大島ならではの春景色を楽しめます。

また、初夏にはシイの花が島を淡い黄色に染め、季節ごとに異なる自然の表情を見せてくれます。豊かな森と青い海が織りなす風景は、訪れる人々の心を癒やしてくれるでしょう。

黒潮が育む豊かな海

紀伊大島周辺の海域には、黒潮が流れ込んでいます。そのため魚影が非常に濃く、古くから漁業や捕鯨の拠点として発展してきました。

海岸線にはダイナミックな海食崖が続き、透明度の高い青い海と荒々しい岩場が独特の景観を作り出しています。特に磯釣りの名所として有名で、全国から多くの釣り人が訪れます。

スキューバダイビングスポットとしても人気が高く、黒潮の影響を受けた豊かな海中世界を楽しめます。熱帯魚やサンゴ、回遊魚など多彩な海洋生物に出会えることから、海好きにはたまらない場所となっています。

家族で楽しめる自然体験

紀伊大島には、釣り公園やキャンプ場、海水浴場なども整備されています。須江白野海水浴場では、穏やかな海辺でゆったりと過ごすことができ、家族連れにも人気です。

自然豊かな島内では、海遊びだけでなく森林散策や展望台巡りなども楽しめます。静かな島時間の中で、日常を忘れてのんびりと過ごせるのも紀伊大島の魅力です。

トルコとの友好の原点「エルトゥールル号遭難事件」

紀伊大島を語るうえで欠かせないのが、1890年に発生したエルトゥールル号遭難事件です。

オスマン帝国(現在のトルコ)の軍艦エルトゥールル号は、日本訪問を終えて帰国途中、台風によって樫野埼沖で遭難しました。暴風雨の中、多くの乗組員が海へ投げ出されるという大惨事となりました。

その時、樫野地区の住民たちは自らの危険を顧みず、嵐の海へ飛び込み、生存者の救助活動を行いました。食料や衣類を提供し、懸命に看病したことで、多くの命が救われたのです。

この出来事は日本とトルコの友好の原点として現在まで語り継がれており、トルコでは教科書にも掲載されるほど有名な歴史となっています。

トルコ記念館

樫野埼には、この遭難事件を後世に伝えるトルコ記念館があります。

館内ではエルトゥールル号の模型や事故に関する資料、海底調査によって引き揚げられた遺品などが展示されています。また、映画「海難1890」で使用された小道具なども展示されており、事件の歴史をより身近に感じることができます。

館内のテラスからは、エルトゥールル号が座礁した「船甲羅」を望むことができ、当時の出来事に思いを馳せることができます。

トルコ軍艦遭難慰霊碑

樫野埼には、遭難者を慰霊するための慰霊碑も建立されています。

事故翌年に建立された墓碑と追悼碑に加え、後にトルコ共和国初代大統領ムスタファ・ケマル・アタテュルクの支援によって新たな慰霊碑が建設されました。

現在も日本とトルコ双方の人々によって大切に守られており、友好の象徴として多くの観光客が訪れています。

日本最古級の石造灯台「樫野埼灯台」

紀伊大島東端の樫野埼には、白亜の美しい樫野埼灯台があります。

この灯台は「日本の灯台の父」と呼ばれるイギリス人技師リチャード・ヘンリー・ブラントンによって設計され、1870年に初点灯しました。日本最古級の石造灯台として知られています。

らせん階段を上ると、太平洋を一望する絶景が広がります。晴れた日には遠く太地町方面まで見渡すことができ、水平線がどこまでも続く壮大な景色を楽しめます。

灯台周辺には旧官舎も残されており、異国情緒漂う雰囲気が魅力です。

迫力満点の景勝地「海金剛」

紀伊大島南岸に位置する海金剛(うみこんごう)は、島を代表する絶景スポットです。

荒波によって削られた巨大な岩礁群が連なり、まるで自然が生み出した巨大彫刻のような景観を作り出しています。ピラミッド型やドーム型の岩が海上にそびえ立ち、その迫力には圧倒されます。

この景色が朝鮮半島の名勝「金剛山」を思わせることから、「海金剛」という名前が付けられました。

海金剛は、朝日新聞社の「21世紀に残したい日本の自然100選」にも選ばれており、自然の力強さと神秘を感じられる場所として知られています。

鷹ノ巣展望台からの絶景

海金剛を眺めるなら、鷹ノ巣展望台がおすすめです。

展望台からは、断崖絶壁と太平洋の大パノラマを一望できます。荒々しい海と岩礁、そしてどこまでも続く青い海のコントラストは圧巻です。

特に夕暮れ時には、海が夕日に染まり幻想的な風景が広がります。

歴史と文化を感じる水門祭

紀伊大島では毎年2月11日に、水門神社の例大祭である水門祭(みなとまつり)が開催されます。

この祭りは和歌山県指定無形民俗文化財にも指定されており、古くから島民によって大切に受け継がれてきました。

祭りでは「お的の儀」や「神幸の儀」、神霊を乗せた船による渡御、櫂伝馬競漕など多彩な行事が行われます。

特に櫂伝馬競漕は迫力満点で、「鳳」と「隼」という二隻の伝馬船が串本港との間を往復しながら競い合います。力強い櫂さばきと勇壮な掛け声は、見る人を魅了します。

この祭りには、かつて風待ち港として栄えた大島港の歴史や、海と共に生きてきた島民の文化が色濃く残されています。

神秘的なスポット「地獄のガバ」

須江地区の森の中には、「地獄のガバ」と呼ばれる巨大な縦穴があります。

「ガバ」とは洞穴を意味する言葉で、この縦穴は直径も深さも数十メートルあるといわれています。底には海へ通じる横穴があり、満潮時には海水が流れ込むこともあります。

昔、旅の行者が追われてこの場所で命を落としたという悲しい伝説も残されており、神秘的かつ少し恐ろしさを感じる場所となっています。

周囲には柵がないため、見学の際には十分な注意が必要です。

金山展望台から眺める雄大な景色

島内には、絶景スポットとして知られる金山展望台もあります。

展望台までは少し山道を歩きますが、その先には橋杭岩や串本の山々、青い海を一望する素晴らしい景観が広がっています。

自然に囲まれながら歩く時間も心地よく、ハイキング気分で楽しめる人気スポットです。

迫力満点の本マグロ養殖体験

紀伊大島では、近畿大学が世界で初めて成功した本マグロ完全養殖に関連した体験も楽しめます。

巨大な生簀の中を泳ぐ本マグロにエサを与える体験は迫力満点です。数百匹のマグロが一斉に飛びつく様子は圧巻で、海の仕事を身近に感じられる貴重な体験となっています。

体験後にはマグロの試食も楽しめるため、食と学びの両方を満喫できます。

トルコ雑貨店「Ottoman Konak」

樫野埼周辺には、トルコ雑貨を扱うおしゃれなショップもあります。

色鮮やかなキリム絨毯やガラス細工、アクセサリー、陶器など、本場トルコから輸入された工芸品が並び、異国情緒あふれる空間となっています。

また、長く伸びることで有名なトルコアイス「ドンドルマ」を味わうこともでき、観光客に人気です。

くしもと大橋が結ぶ島の暮らし

1999年に完成したくしもと大橋は、紀伊大島と本州を結ぶ重要な橋です。

白いアーチが青い海によく映え、その美しい姿は串本を代表する景観のひとつとなっています。

橋の開通以前、島民はフェリーや巡航船に頼る生活を送っていました。橋の完成によって交通事情は大きく改善され、観光や生活環境も大きく変化しました。

現在ではドライブスポットとしても人気が高く、橋を渡るだけでも爽快な気分を味わえます。

紀伊大島で自然と歴史を満喫しよう

紀伊大島は、美しい海や森に囲まれた自然豊かな島でありながら、日本とトルコの友好の歴史を今に伝える特別な場所でもあります。

海金剛の迫力ある景色、樫野埼灯台からの絶景、トルコ記念館で学ぶ歴史、そして豊かな海の幸など、見どころは尽きません。

静かな島時間の中で自然と歴史に触れながら、心に残る旅を楽しめる紀伊大島。串本を訪れた際には、ぜひゆっくりと巡ってみてはいかがでしょうか。

Information

名称
紀伊大島
(きいおおしま)

串本・古座川

和歌山県